【涼香】38.入院病棟 「え…何!?どうして…!」

小説

涼香は本当に厳しい状況に追い込まれた。

CM女王の夢がイメージ悪化で崩れ去り、米騒動の渦中では国も農家も救えなかった無力感。

さらに因縁の彩乃に負けたことで、彼女の心は「死にたい…」と呟くほどの喪失感に支配されていた。

ヨガファイヤーマッサージで倒れた後、意識が朦朧とし、深い闇に沈んでいた。

やがて、彼女は目を覚ました。意識がぼんやりとし、頭が重い。

目の前には広い部屋が広がり、青いベッド。

「ここは…どこ?」と呟き、身体を起こそうとする。

が、ふと下を見ると、服がなく、全裸であることに気づいた。

冷たい空気が肌に触れ、恐怖が一気に全身を駆け巡る。

「え…何!?どうして…!」と叫び、胸と下腹部を隠そうとするが、裸の無防備さが彼女をさらに縮こまらせた。

心臓が激しく鼓動し、冷や汗が背中を伝う。

「誰かに見られたら…どうしよう…」と頭がパニックに陥り、部屋の隅に目をやり、隠れる場所を探した。

だが、どこにも安全な場所はなく、不安が膨らむばかりだった。

部屋を出て廊下へ向かう。

足音が反響し、誰もいない空間に緊張が走る。

「誰か…いないの?」と小さな声で呼びかけるが、返事はなく、ただ冷たい空気だけが彼女を包む。

裸の身体が空気に晒され、肌が粟立つ感覚が恐怖を増幅させた。

廊下の長い影が揺れ、どこかでかすかに聞こえる機械音が、まるで監視されているかのような錯覚を植え付けた。

裸であるがゆえに、壁や角の向こうから誰かに見られているのではないかという恐怖が、

足取りをさらに重くした。

膝が震え、「ここから出なきゃ…でも、こんな姿で…」と焦りが募るが、方向感覚すら失い、歩くたびに裸の無力感が彼女を襲った。

やっと見つけた「診察室」と書かれたドアに手をかけ、恐る恐る開ける。

すると、そこは――

あそこだった。

昭和保健室と紹介された、あのトラウマの部屋に繋がっていた。涼香の呼吸が乱れた。

「また…ここ?」と呟いた瞬間、ドアが開き、あの医者が現れた。

「また君か」とニヤリと笑い、

「では診察を始めよう。前回よりも詳しく検査しなければな!」と近づく。

涼香の全身に寒気が走り、恐怖が彼女を支配した。

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