オーディションは規制の緩い海外配信サイト“PUNCH”で放送されている。
動画が配信されていたウェブサイトのコメント欄は、各国からの視聴者コメントで沸き返った。
視聴者たちは紗良のパフォーマンスについて即座に意見を述べ、
日本のオーディションでこのような恥態が晒されていることに驚きや興奮、信じられないといったコメントが相次いだ。

「うお!予想以上だった!彼女の股間、真っ黒!」
「あ!陰毛がびっしり生えてる!」

「オーディション中に女の子にそんなことを頼むなんて、一体どんなバカなの?気持ち悪いし、屈辱的よ!運営は恥を知れ!」
「陰毛は生えてるけど、まあ、とにかくすごくいい感じ!これはすごいオーディションになった!」
「せめてその乱れた陰毛はカットして!演技の邪魔になるわ!」
「なぜ剃らないのか理解できない!きちんと整えている方がずっといいのに!」
「よくやった!陰毛を見せるのは恥ずかしいにもかかわらず、粘り強く立ち向かい、素晴らしいオーディションをやり遂げた。これからも頑張って!」

「あらまあ、彼女の黒い陰毛はまさに芸術作品!白い肌とのコントラストが息を呑むほど美しく、普段は見るべきではない場所にも視線を惹きつけてしまう。ブラボー、ブラボー!」

泣き崩れる紗良に田中が厳しく声をかける。
「紗良ちゃん。有名人になりたいなら、もっと自分の身だしなみを整える必要がある。君の陰毛は濃すぎる。ちゃんと処理をしなさい。」

「はい。ごめんなさい……」
紗良は恥辱の中、泣きながら返答した。
彼は少し間を置いてから、こう付け加えた。
「でも、オーディションは合格だ。君には必要な資質がある。君に合う仕事が見つかったら連絡するよ。それまでは家に帰って、このことは忘れていいよw」
涙が頬を伝い、紗良は呆然と頷いた。
たった今起こったことが信じられなかった。
撮影現場を後にしながら、二度とこんな目に遭いたくないと心に誓った。
屈辱感は耐え難いものだったが、家族の借金を返済しなければならないという思いが、彼女を支え、そして縛る。
配信での儲けは、応募者の紗良には一銭も支払われず、全額田中に支払われる。
田中「オーディションっていうシステムも悪くないな!ケケケケ!」
「おい次郎!次の応募者を呼びなさい!」
次郎「はい!次は、黒船が来ます!」
田中「??」
次郎「こ・・・黒船!」
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一方、監禁病棟では
近くに立つ監護士に涼香が尋ねた。
「ねえ監護士、中抜きって知ってる?」

独特な表情の男は、冷ややかに鼻を鳴らして答えた。
「ピンハネのことだろ?当然知ってるぞ。」
その簡潔な返事に、涼香の心がざわめく。
続けて、監護士は低い声で付け加えた。
「芸能界に限ったことではない。日本は中抜きだらけだ。東京オリンピックも、万博も。」
その言葉に、涼香の目が驚きで揺れた。
「万博もそうだったんだ…」
と呟き、社会の闇が彼女の知らないところで広がっている実感に震えた。
監禁病棟の冷たい空気の中、彼女はさらに言葉を続けた。
「私、田中平蔵という人のスカウトで芸能活動してたんだけど、もしかして私も中抜きされてたのかな…」
声は震え、過去の忙しさと無知が悔やまれた。
監護士は一瞬黙り、薄い笑みを浮かべて言った。
「絶対中抜きされてそうだな。物凄く。」
その言葉に、涼香の目が大きく見開かれた。
「絶対…?物凄く…!?ちょっと私、忙しくて給与明細とか残高ずっと見てなかったから、ちょっとだけスマホ返して!確認したい!」
とすがるように叫んだ。
スマホがあれば、ファンの声だけでなく、自分への振り込み金額がどれほどなのかも分かる。
だが、監護士は無表情で首を振った。
「今は無理だ。」
「…」 涼香の声は途切れ、絶望が再び彼女を包んだ。
ベッドに凭れかかり、涙がこぼれそうになる。
これまでの恥辱感が、中抜きの不安と重なり、心が折れそうだった。
だが、本から得た知識が小さな火を灯し、
「田中平蔵…あいつ…」と呟く。
監禁の闇の中で、真実への第一歩が芽生え始めていた。


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