【涼香】5.雑談配信と葛藤

小説

涼香は田中平蔵の「支援」でテレビデビューを果たした。

地方の温泉旅館を紹介する番組『温泉めぐり紀行』でのバスタオルポロリ事故は、彼女に新たな傷を残したが、CM女王になる夢はまだ胸の奥で燃えている。

「あの事故さえなければ…でも、テレビで輝くには、これも乗り越えないと」

と、涼香は自分を奮い立たせる。

田中の要求する宿泊サイト「デンデン」のステルスマーケティングには葛藤がある。

違和感を覚えるが、「テレビってこういうものだよね。CM女王への第一歩だ」と受け入れる自分もいる。

田中を信用しているわけではない。ポロリ事故の裏に彼の策略があったのではと疑いつつ、今の涼香には彼のコネに頼るしか道がない。

「あの人がいなきゃ、テレビの仕事なんて…」と、複雑な思いを抱えながら、彼女は次のチャンスを待つ。

そんな中、テレビ出演の合間に、涼香は久しぶりにライブ配信を再開することにした。

ファンとの繋がりを確かめたい、そして何より、テレビのプレッシャーから解放された「自分らしい時間」を取り戻したかった。

ポロリ事故の爪痕は、SNSで容赦なく広がっていた。

Xでは、涼香のポロリシーンを無限に繰り返すGIF画像が拡散され、

彼女の悲鳴付きでスローモーションやズームインされた動画、

放尿時の尻とポロリ時の乳をBGM付きで繰り返す動画が無数に出回る。

「#涼香ポロリ」のハッシュタグはトレンドから消えず、

「ぷるぷる最高!」

「あの悲鳴、癖になるw」

と煽る投稿が溢れる。一方で、

「涼香ちゃん可哀想」

「これは放送事故だろ」

と擁護する声もあるが、嘲笑と好奇の波に埋もれがちだ。

自宅でスマホを握りしめ、涼香は怒りと恥ずかしさに震える。

「なんで…こんな目に…私の夢、こんなんじゃないのに…」

涙が頬を伝うが、ふと冷静な自分が顔を出す。

「このまま引きずってても、イメージは悪くなるだけ。

CM女王になるには…活動を続けるしかない!」 涼香は震える手を握り締め、配信の準備を始める。

配信当日、涼香は自宅の小さな部屋でカメラをセット。

緊張と懐かしさが混じる笑顔で、

「お久しぶり、涼香だよ! テレビ出て、なんかバタバタしてたけど…やっぱり配信が落ち着くね!」

と視聴者に語りかける。

画面には、かつての「リョウカ応援隊」をはじめ、懐かしい名前や新しい視聴者が次々と現れるチャット欄は一気に賑わい、

「涼香ちゃん、配信復活キター!」

「テレビよりこっちが本物!」

「ポロリ事故、めっちゃ笑ったw」

とコメントが飛び交う。涼香は苦笑しながら、

「もう、ポロリの話はナシで! ほんと恥ずかしかったんだから…」と軽く流す。

だが、雑談が進むにつれ、チャット欄にステマに関するコメントがちらほら現れ始める。

ファン派:「涼香ちゃんのデンデン推し、めっちゃ自然で好きw」「クーポン使ってみたよ! 涼香のおかげで安く旅行できた!」と、ステマと気づきつつも応援する声。

ポロリ目当て派:「デンデンとかどうでもいいけど、おっぱいポロリまた見たい」「もっとハプニング頼むぜw」と、事故を期待する軽いノリ。

ステマ批判派:「地上波ってステマばっかだな」「デンデン推し露骨すぎ」「涼香も案件に魂売ったか…」と、辛辣な意見。

純粋派:「涼香ちゃん、ステマしないでほしいな」「配信の素の涼香が一番好き」「テレビよりこっちでずっと見てたい」と、誠実さを求める声。

涼香はチャット欄を読みながら、笑顔を保つのが精一杯だ。

「え、デンデン? いやいや、ほんと良いサイトだよ! クーポンもガチで使えるし!」

と明るくはぐらかす。

だが、内心は冷や汗もの。

「やっぱり…みんな気づいてるんだ。契約上、否定できないけど…このままじゃ、ファンが離れちゃうかも…」

ポロリ事故で注目された人気も、ステマのイメージがつくと長続きしない。

彼女の頭に、テレビの華やかなスタジオがちらつく。

「やっぱり…またテレビに出なきゃ。もっと大きな仕事で、CM女王に近づかないと…」

コメント欄はさらに加速する。

「テレビより配信増やして!」

「ステマでも涼香なら許すw」

「いや、案件やめろよ」

「ポロリ2回目まだー?」

と、賛否両論が渦巻く。

涼香は笑顔で

「みんな、いろいろ意見ありがとう! デンデンは…ほんと、私も使ってるからさ! まあ、テレビも配信も、どっちも頑張るよ!」

と締めるが、声にはかすかな震えが混じる。

配信を終え、カメラを切った瞬間、彼女はベッドに倒れ込む。

「このままじゃ…人気、落ちそう。田中さんに頼るしかないけど…でも、私の配信、待っててくれる人もいる…」

涼香はスマホを握りしめ、葛藤に揺れる。田中の冷酷な笑顔と、彼がもたらすテレビのチャンスが頭をよぎる。

「あの人の力、嫌いだけど…今はまだ必要だよね?」

一方で、チャット欄に溢れたファンの声—特に「素の涼香が好き」と応援してくれた言葉—が心に響く。CM女王の夢は遠く、ステマの違和感とテレビのプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、涼香は呟く。

「私は…どうすれば、私のままでいられるんだろう…」

彼女の物語は、テレビと配信、ステマと誠実さ、田中のコネとファンの絆の間で揺れる、新たな岐路に立っていた。

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