【涼香】59.恥辱の温泉リポート 群馬編② そんな内容だとは…。私が今回応募したのは…

小説

群馬の山奥、霧島隠れ家 翠雲荘の温泉は、湯けむりに包まれた静かな佇まいを装いつつ、田中の新たな企みの舞台と化していた。

円安で外国人観光客が押し寄せる中、田中は「温泉リポート」と偽装した羞恥計画を

群馬班と栃木班の2か所で同時開催。

炎上による応募者離れを防ぐため、時間を近づけて逃げ場を塞ぐ狡猾な策略だ。

群馬班の担当は、たかし。かつて田中の番組でやらかしてクビになった男だが、

人員不足で渋々再雇用された。

たかしは、脂ぎった笑みを浮かべながらカメラを調整し、スタッフに怒鳴る。

「さっさと準備しろ! インバウンド狙いでバッチリ撮るぞ!」

潜入捜査中の万由(偽名:マユ)は、ADとして群馬班に配属され、カメラの後ろで静かに下働きをしながら様子を伺う。

彼女は目立たぬようメモを取りながら、田中の組織の闇を探る。

ステージ、いや、温泉のセットに現れたのは、明里あかり

キー局の女子アナ試験に落ち、夢を諦めきれず応募した彼女は、白いバスタオルを巻き、緊張した笑顔でリポートを始める。

彼女の声は、紅茶のような温かみを帯びつつ、プロの女子アナを目指す気概に満ちている。

「ここが新しく開かれた霧島隠れ家 翠雲荘です! 撮影のため、男湯にお邪魔しています!」

彼女は後ろに立つ宿のスタッフを振り返り、続ける。

「なんとここは、後ろにいらっしゃる温泉宿の方々が背中を流してくれるサービスがあるんです。嬉しいですね!」

コメント欄がざわつく。

「明里、めっちゃ可愛い!」

「でも、男湯って…怪しくね?」

海外からも

「She’s adorable, but this smells like a trap!」 (彼女、めっちゃ可愛いけど、罠の匂いが!)。

たかしがニヤリと笑い、割り込む。

「おいおい、明里、ダメだよ。タオルは取らないといけないんだ、ここの宿は。」

明里の顔が固まる。

「え、…!?」

彼女はバスタオルをぎゅっと握り、戸惑う。

「温泉だから、当たり前でしょ?バスタオルのまま温泉に入ったら、外人さん達が全員真似しちゃうよ!」

たかしは畳みかける。

コメント欄が一気に過熱。

「え、すっぽんぽん!?」

「明里、騙されてね!?」

海外からも

「Don’t do it, Akari!」 (やめな、明里!)

「exploiting again!」 (また搾取してる!)

明里は震える。

「ちょっと…そんな内容だとは…。私が今回応募したのは…」

たかしはさらに圧をかける。

「もう待てねえよ! 撮影時間すぎたらどうすんだ! 」

「ここの宿貸し切り代、出張費、スタッフ人件費で数百万かかってんだぞ! 払えるの!?」

たかしに畳みかけられ彼女は絶句し、思考が混乱し始める。キー局の不採用通知が頭をよぎった。

全てをかけた採用試験に敗れ、内心深くプライドが傷ついている今の明里には、たかしの言葉が深く刺さる。

そして女子アナになるため、エステ通いで貯金をほぼ使い果たした彼女には、支払い能力はない。

彼の声に、スタッフが下品に笑い、カメラが明里の動揺をアップで捉える。

コメント欄がカオスに。

「たかし、脅しすぎ!」

「明里、可哀想…」

海外からも

「This is coercion, stop it!」 (これ、強制だろ、止めろ!)

「Akari, you’re stronger than this!」 (明里、君はこんなのより強いよ!)

明里の目が揺れる。

「どうしよう…私、はめられた…!?」

「でも、そんなお金支払えないし借金なんて…でも、カメラに裸を晒すなんてしたらもう私の夢は…」

彼女は撮影スタッフに押し付けられた空気感の中、震えながら俯く。

明里の深呼は乱れ始め、握る拳には力が入らない。

温泉の湯けむりの中、明里の過酷な試練が始まろうとしていた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました