シン・湯けむりの宿 楓月庵の温泉セットは、湯けむりとカメラの熱で煮えたぎっていた。
莉緒、葉月、千尋は、バスタオルを握りしめ、カメラの前に立つ。
次郎の衝撃的な提案――「野球拳で負けた1人が全裸で温泉リポート」――に、3人の心は動揺で波立つ。

「帰ろう…?」「さすがに無理だよね…。」
莉緒が震える声で呟く。「だって、そんなの聞いてなかった! 裸になるなんて…。」
千尋が頷く。「うん…」
葉月も唇を噛む。「温泉巡りの夢だったのに…こんなの、想像してなかった…。」
3人はカメラの脇で顔を寄せ、急いで話し合う。「やっぱり、やめようよ。」「絶対おかしいよね?」「うん、3人で応募したんだから、みんなで断ろう。」

莉緒が代表して、次郎に訴える。「次郎さん、やっぱりやめます! 裸なんて、聞いてなかったです! 」
だが、次郎は切り返す。
「今さら無理だよ、もう契約しただろ? 」「応募フォームに同意のクリックもあったじゃん。」「ほら、ここまで宿の貸し切り代、スタッフ人件費、出張費で数百万かかってんだよ。支払えるの? 君たち、派遣の給料でさ。」
3人の顔が青ざめる。派遣社員の安い給料では、数百万など払えるはずがない。日々の生活費も切り詰め、広告で見た温泉巡りに少しずつ貯めたお金を使い果たしていた。貯金はゼロだ。
千尋が震える声で呟く。「なんてこと…同意書、ちゃんと読んでおけば…。」
莉緒が目を潤ませる。「私たちのミス…でも、こんなのって…。」
葉月が唇を噛み、言う。「温泉のためって…勢いで応募したのに…。」

3人は再び顔を寄せ、話し合う。彼女たちの関係は、ランチのメニューを揃え、遊びに行く時は1円単位で割り勘にするほど公平だ。互いを尊重し、誰一人心残りがないように。そんな絆が、彼女たちを温泉巡りの趣味で結びつけていた。
だが、今回の野球拳は、裸になる。しかも1人だけが犠牲になる不公平なゲームだ。「裸なんて…絶対ダメだよね…」「でも、支払いなんて絶対無理…。」
選択肢は限られていた。次郎が苛立たしげに声を上げる。「もう時間だよ! 間に合わなかったら全てパーだぞ! インバウンド客向けの案件、ガッツリ盛り上げなきゃ!」 彼はマイクを握り、まくしたてる。「じゃあ、いくよ! アウト! セーフ! よよいのよい!」
スタッフが下品に笑い、カメラが3人をアップで捉える。
3人は動揺しながらも、つられてじゃんけんをする。
莉緒と千尋がパー、葉月がグー。
葉月の負けが決まった。
会場に重い沈黙が流れる。莉緒と千尋が葉月を気遣い、声を上げる。
「いや、こんなのだめだよ!」
「こんなのおかしいよ!」
だが、葉月は静かに微笑む。
「…私は、大丈夫だよ。」

彼女の声は震えながらも、力強い。
「むしろ、私で良かった。全員で脱ぐほうが、もっと苦しいかもしれないし。」
莉緒と千尋が涙目で訴える。
「でも、葉月…こんなの、ひどいよ…!」
葉月は2人の手を握り、目を合わせる。
「いいの。私、今の仕事は大嫌い。毎日、派遣切りの不安に怯えてる。でも、莉緒と千尋と出会えて、一緒に遊べて、本当に楽しいんだ。」
彼女の声は、温泉の温もりを宿す。
「学校では気の合う友達がいなくて、周りに合わせてばかりだった。でも、2人とは趣味も同じで、心から楽しめる。こんな友達、初めてだよ。感謝してる。」
彼女は笑顔で続ける。
「これからも一緒に遊びたいし、そのためにも、借金なんて絶対背負わせたくない。私がすればいいんだから。」

葉月は目を輝かせ、言う。
「さ、笑顔でやり遂げよう! 大事な配信らしいし!」
莉緒と千尋は涙をこらえ、頷く。
「葉月……。」
3人は笑顔で抱き合い、絆を確かめる。
莉緒と千尋が、葉月のバスタオルにそっと手をかける。
「思い切って取って!」
葉月の声が、湯けむりに響く。
会場と配信の衆人環視の中、バスタオルがスルリと落ち、葉月の裸体が露わになる。
彼女の身体は、派遣のストレスでややくたびれているが、温泉への情熱を映すように、しなやかな曲線が光る。控えめな胸と、そして・・・


コメント