次郎は温泉セットでニヤリと笑い、3人の抱擁を無視して声を上げる。
「おいおい、泣いてる場合じゃねない! 借金にはならねえ、大丈夫! その代わり、1人のお客様が来たから!」

彼の声に、スタッフが下品に笑い、カメラが不穏な動きで新たな人物を捉えようとする。
莉緒が葉月を抱きながら叫ぶ。
「お客様って…何!? もうやめてよ!」
千尋も涙目で訴える。
「葉月はもう十分頑張った! やめさせて!」
だが、葉月は震える手で2人の腕を握り、囁く。
「大丈夫…私が選んだんだから…。」
彼女の目は、涙で濡れながらも、友達への思いでかすかに輝く。
次郎の声が響く。
「お客様は葉月ちゃんと話したいらしいから、他の2人ははけて!」
莉緒と千尋が驚き、葉月を心配そうに見つめる。
「葉月、大丈夫…?」
「1人にしないでよ…!」
だが、次郎が手を振る。
「ほら、早く! インバウンド客向けの特別サービスだ!」

2人は渋々退場し、葉月は湯の縁に1人残される。
不安が胸を締め付け、彼女の心臓がバクバクと鳴る。
「お客様って…何…? また何か恥ずかしいこと…?」
カメラが彼女の動揺をアップで捉え、スタッフの笑い声が湯けむりに響く。
間もなく、湯けむりの向こうから「お客様」が現れる。

全裸の若い金髪の男性、まるで少女漫画から飛び出したようなハンサムボーイだ。
鍛えられた筋肉と輝く青い目が、温泉の光に映える。
彼は堂々と葉月に近づき、金曜ロードショーの日本語吹き替え風の声で話しかける。
「僕の名前はオレナルド。みんなにはプリンスって呼ばれてる。」
葉月の目が丸くなり、動揺で声が震える。
「え!? え!? 王子…!?」
オレナルドは優雅に微笑み、葉月の手を取り、湯の中で跪く。
「葉月、僕は君に惚れてしまったよ。なんて美しい身体なんだ。」
彼の目は真剣で、葉月のふっくらしたウエストや控えめな胸を、愛おしそうに見つめる。

「葉月、僕と結婚してくれ。日本は円安だし、物価高に賃金が追い付いてない。そんな中で、君はこんな過酷なオーディションに立ち向かった。君の強さに心を奪われたよ。」
彼は続ける。
「僕は貴族の出で、僕の国の通貨価値は日本とは逆に上昇中だ。僕こそが君を幸せにできる。結婚しよう。」
葉月の心臓は、今日の羞恥、恐怖、友達との絆で何度も高鳴っていた。
だが、オレナルドのプロポーズに、彼女の胸は新たな鼓動で震える。
「このドキドキ…私の恋心…! これが私の運命なんだ!」
彼女の脳は、一連の試練を乗り越えた先に訪れたこの瞬間を、運命の愛と結びつける。
涙がこぼれ、彼女は頷く。
「はい…!」
彼女の声は、湯けむりに響き、決意と恋心が混ざり合う。
莉緒と千尋は、温泉セットの脇で配信モニターを見て、泣きながら感動する。
「良かった…葉月、こんな目に遭いながらも…!」
「諦めなくて本当に良かった!」
千尋が涙を拭う。
「おめでとう、葉月! おめでとう!」
莉緒も嗚咽を漏らす。
「私たち、借金の心配してたけど…葉月の人生、大逆転だ!」
2人は後ろめたさから解放され、葉月の幸せを心から喜ぶ。
次郎はニヤリと笑い、スタッフに手を振る。
「いいね、いいねー! じゃあ、僕たちは邪魔者だから、あとは2人で楽しんでね! 皆、脱衣所にはけよう!」
スタッフと莉緒、千尋は気を使って退場し、湯けむりの中に葉月とオレナルドだけが残る。
オレナルドは葉月に微笑み、囁く。
「良かった。じゃあ、早速愛し合おう、葉月。」
葉月は頬を赤らめ、恥ずかしさと恋心で目を輝かせる。
「うん…!」



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