【涼香】2.あれ?今かわいい子が路地裏に…

小説

たかしは、底辺ライブ配信者として細々と活動していた男だ。視聴者数はいつも一桁で、コメント欄は閑散としているのが常だった。この日、彼はいつものように商店街をブラブラしながら配信していたが、特に面白いネタもなく、ただ「いやー、今日も平和だな!」とカメラに向かって独り言をつぶやくばかり。視聴者からは「たかし、もっと何かやれよw」と冷やかされる程度で、配信は盛り上がりに欠けていた。「あれ?今かわいい子が路地裏に…」たかしは路地裏へ向かった。

路地の入り口からスマホのカメラライトが涼香を照らした。たかしだった。彼は路地を通りかかり、涼香の姿を目撃したのだ。

「お、おおっ!? こ、これは…!」と驚きつつ、底辺配信者の本能が働いた。たかしは即座にカメラを涼香に向け、配信を続けた。「み、みんな! すげえことになってるぞ! あの涼香ちゃんが…!」と興奮気味に実況。たかしの視聴者数はみるみる増え、チャット欄は「マジかよ!」「涼香ちゃん!?」「お尻丸出し!」と大荒れになった。

涼香はライトの光にギョッとして顔を上げ、たかしのカメラに気づいた。「え、うそ、なに!?」と叫び、羞恥と焦りで頭が真っ白に。

急いで下着を整え、スカートを直しながら立ち上がると、ゴミ箱の陰から飛び出し、路地の奥へ逃げ出した。たかしは「待って、涼香ちゃん!」と追いかけようとしたが、涼香のおしっこに足を滑らせて転び、カメラが地面に落ちた。それでも配信は続き、視聴者は「たかし、追いかけろ!」「聖水!これやばいだろw」と大盛り上がり。

涼香は路地の奥から別の通りへ飛び出し、息を切らしながら人混みに紛れた。心臓はバクバク、頭はパニック状態だった。「見られた…配信された…どうしよう…」と呟きながら、スマホを握りしめる。自分の配信を再開する勇気はなく、ただ逃げるように家路を急いだ。

その頃、SNSではたかしの配信が猛烈な勢いで拡散されていた。Xには「#涼香ちゃん路地裏放尿」「#たかし神配信」といったハッシュタグがトレンド入りし、たかしの視聴者数は一夜にして数千人に膨れ上がった。「たかし、こんなバズり方ありかよw」「涼香ちゃん可哀想だけど笑った」「たかしフォローした!」「聖水聖地巡礼に行こうぜ」と、ネットは祭り状態。たかし自身も自宅で「マジか…俺、知名度上がっちゃった…?」と信じられない様子でコメントを読み漁っていた。

一方、涼香は自宅に帰り、ベッドに倒れ込んでスマホを手に取った。SNSを開くと、自分の名前がトレンドに並び、たかしの配信のスクショや切り抜きが拡散されているのを見て顔を覆った。「もう終わりだ…」と呟くが、視聴者からのDMには「涼香ちゃん、気にしないで!」「次も配信見るよ!」と励ましの声もちらほら。涼香は複雑な気持ちを抱えながら、翌日の配信をどうするか考え始めた。

たかしは一躍ちょっとした時の人となり、調子に乗って「次はもっとすごい配信するぜ!」と意気込むが、涼香の心に残った傷と、彼女の配信人生の行方は、まだ誰にもわからない。

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