【涼香】78. もも崩壊

小説

エキゾチカ店舗B。

剥ぎ取られた布が床に落ち、カメラの赤いランプが無慈悲に点滅する。ももは両手で顔を覆った。

裸ではなく、顔を隠したくなった。

自分の髪が肩に乱れ、瞳が指の隙間から覗く。

その顔と、自分の全裸が同じ画面に映るという事実が、胸を抉る。

「やだ……こんな顔、見られたくない……!」

いつもステージで輝くために染めた明るい髪。

アイドルになるために無理してでも作り続けた笑顔。

それが今、恐怖と羞恥に歪んでいる。

無理にでも笑顔を保ってきた「もも」が、崩れていく。

それが一番怖かった。

手で隠した顔の下で、唇が震える。

「笑えない……笑えないよ……」

カメラは容赦なくズーム。

肌に映える、ぴんと尖ったオレンジがかったピンクの乳首。

薄く伸びた黒い陰毛が、照明に濡れて光る。

地毛の色が、彼女が「なりたい自分」になるために隠してきた真実だった。

【コメント欄】

「ももちゃん顔隠してるのエロすぎ……」

「笑顔のアイドルが壊れる瞬間、ヤバい」

「乳首ピンピンじゃん!恐怖?それとも感じてる?」

「黒い陰毛キター!普段の金髪は染めてたんだな」

「顔見せろよ!泣いてる顔見たい!」

「これが本当のももなんだろ?最高に興奮する」

ももはファッカーズの一人が読み上げるコメントを聴いて、ますます顔を押し隠す。

「違う……こんなんじゃない……!」

いつも「みんなを笑顔にしたい」って言ってた自分。

握手会で「ももちゃんの笑顔に救われたよ」って言われた自分。

その笑顔が、今、完全に崩れている。

カメラに映る自分の恐怖顔が、世界中に晒されている。

それが一番耐えられなかった。

裸より、顔を晒されることの方が怖かった。

裸はまだ「身体」だけど、顔は「もも」そのものだから。

震える指の間から、涙がこぼれ落ちる。

【コメント続々】

「涙落ちた!」

「顔隠してるのにエロすぎる」

「笑顔のアイドルが泣いてる……壊れた」

「これが本当のももちゃんか……興奮する」

「黒毛と泣き顔のギャップ、神」

ももは耳を塞ぎたくても、手は顔から離せない。

「見ないで……こんな私、見ないで……!」

だがカメラは止まらない。

ももは震えながら、ただ顔を隠し続けることしかできなかった。

いつも作ってきた笑顔が、もう二度と戻らないかもしれない。

その恐怖が、裸よりも深く彼女を貫いた。

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マユはバイクを降りると、汗を拭う間もなく店舗Bの住所となるビルに向かって走る。

「……なんだこの寂れたビルは?

こんなところで “正式なマッサージ店舗” を営業できるわけがない。

…怪しい!」

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