涼香は自宅の配信ルームに座る。
『極限チャレンジ!美女のサバイバル島』の洞窟での屈辱から数日、ファンのDMに励まされ、
自身のYチューブチャンネルで雑談を始めることにした。
「テレビの笑いものより、配信の素の私が好きって言ってくれる…ここなら自分を取り戻せる!」
カメラを起動し、ノースリーブのトップスでなんとか笑顔を浮かべる。
「みんな、涼香だよ! 久々の配信、気楽に雑談しよ!」
世界最大手の配信プラットフォーム、Yチューブの画面に、視聴者が集まり始める。
コメント欄が即座に反応。
「涼香、ノースリーブやばい! 脇見せて!」
「脇アップキボンヌ!」
視聴者のリクエストに、涼香は顔を赤らめる。
「え、脇!? うー、恥ずかしいけど…ちょっとだけね!」

恥ずかしそうに脇をカメラに近づけ、数秒アップで映す。
コメントが沸く。
「涼香の脇、めっちゃ綺麗!」
「こんなつるつるなら剛毛説ないな!」
「いや、脇は手入れするだろ、マン毛は別!」
と、脇のつるつるさから剛毛論争が再燃。涼香の笑顔がこわばる。
さらにコメントは過熱。
「涼香、洞窟の剛毛論争どうなった?」
「温泉ポロリ、悲鳴やばかったな!」
「路上放尿の真相語れよw」
と、過去のハプニング—路上放尿疑惑、温泉でのポロリ、洞窟での陰毛論争—が次々に持ち上がる。涼香の胸に、1つ1つが重くのしかかる。
考えずにはいられない。

「確かに…私、トイレ近かった。あの配信中、まさかあんな底辺配信者のエサになるなんて…」
路上放尿疑惑の記憶が蘇る。
水たまりをズームした動画がバズり、彼女のお尻がSNSで無限拡散された。
「熱心なファンたちが、あの水たまり…私のおしっこに集まったって…」
噂を耳にした時の恐怖がよみがえる。
「集まって、どうしたの? 怖い、怖い…考えたくない!」
なのに、気になって頭から離れない。過去への憤りがこみ上げるが、どうにも修正できない。
温泉のポロリも最悪だ。
「バスタオルが薄くなっていくの、気づいてた…でも、テレビの仕事が大事で、文句言えなかった。」
乳首が露わになった瞬間、視聴者の歓声とGIFの嵐。
「乳首研究員って奴が、乳首の色や乳輪の形、揺れ具合から弾力性まで分析してるって…」
詳細な「考察」にゾッとする。
「噂じゃ、ポロリのフィギュアまで勝手に作られてる…訴えたいけど、過去は変わらない。」
配信するたび、「おっぱい」「乳首」を想像する視聴者の視線を想像し、恥ずかしさと後悔が押し寄せる。
「ありえないことが起きた…今でも後悔してる。」
そして洞窟事件。
「彩乃…ひどいよ。なんであんな言い方したの…」
彩乃の「全部見えちゃって可哀想」が、モザイク映像と剛毛論争を煽った。
「局部まで見えてなかった….よね…? モザイク、ズレてなかったよね…?」
心配が頭を支配する。あの服装で転倒して開脚してしまったのだ。
しかもそれをドローンが撮影。女性が女性自身である究極の局部。
見られたか見られなかったか、気にならないわけがない。
「でも、詳細に見直したら…私の精神、もたない。」
考えるだけで息が詰まる。
「考えたくない…でも、絶対これからも話題になる。」
恥ずかしさが胸を締め付ける。だが、涼香は唇を噛む。
「この恥ずかしさを打ち消すため、成功するために…今日の仕事を頑張ろう!」
彼女は声を明るくする。
「えっと、ほら、最近ハマってるもの話したいな! 私、コンビニ弁当が大好きでさ! 特にヘブンテレブンのチキン南蛮弁当、最高なんだよね!」
涼香はおもむろにヘブンテレブンの弁当を取り出し、カメラの前で食べ始める。
「うわ、ヘブンのチキン、めっちゃジューシー!」
「ヘブンのタルタル、ほんと神!」と、「ヘブン」を連呼し、大げさに「ん~、美味しそう!」と頬を緩める。
視聴者は最初「かわいい!」と反応するが、様子がおかしいことに気づく。
コメントが変化。「…これ、ステマじゃね?」「ヘブン連呼、わざとらしすぎ」「涼香、テレビのWildPeakみたいにまたステマ?」
涼香は内心焦る。
「バレちゃマズい…でも、契約だから…」
彼女はコンビニチェーン「ヘブンテレブン」からステマの依頼を受けていたのだ。
テレビでのWildPeakステマ(「これがないと生き残れない!」「体力超回復!」)に慣れた涼香は、配信でも同じノリで押し切れると思っていた。
だが、視聴者の目は厳しい。
「上げ底弁当までステマすんの?」
「涼香、テレビで魂売ったか」
「アンチ増えたな、こんなんじゃCM女王無理だろ」
と批判コメントが加速。
アンチの声に、涼香の笑顔が揺らぐ。
「え、ち、違うよ! ほんと美味しいだけだって!」
と弁解するが、コメント欄は「ステマ確定」「失望した」で埋まる。
突然、画面が暗転。
「接続が切断されました」の文字。
涼香は目を疑う。
「え、なに!? 待って、配信が…!?」
Yチューブはステマに厳格なプラットフォームだ。
日本のテレビでは当たり前のステマも、グローバルな視聴者とグローバルな広告業界の監視下では許されない。
涼香の「ヘブン」連呼は、運営のAIと視聴者報告により即座にステマと判定。彼女のアカウントは警告なしでバンされた。
涼香はモニターを見つめ、震える。
「うそ…私のチャンネル…ずっと育てたのに…」
数日間、涼香は放心状態で過ごす。
ベッドに横たわり、スマホに残るファンのDMを読み返す。
「涼香ちゃん、配信で輝いてたよ!」
「また雑談待ってる!」
涙がこぼれる。
「みんなの場所だったのに…私がバカだった…」
日本のテレビではWildPeakや番組の仕掛けを「仕事」と割り切り、ステマの感覚が麻痺していた。
だが、Yチューブのグローバルなルールは甘くなかった。
「CM女王になる夢…配信も失って、どうすれば…」
途方に暮れる涼香の頭に、嫌な顔が浮かぶ。
田中だ。あの脂ぎった笑み、洞窟での「視聴率さらに急上昇! WildPeak爆売れ!」と哄笑する声。
涼香は吐き気を覚える。
「あいつ、大っ嫌い…ハプニングもステマも全部アイツのせい…」
だが、テレビ業界でのコネは田中しかいない。
涼香は震える手でスマホを握る。
「夢を諦めるか…アイツに頭下げるか…」
葛藤の末、彼女は田中にメッセージを送る。
「田中さん、相談があります。話したいです。」
メッセージを見た田中は薄暗い部屋でブランデーを片手に一人つぶやく。
「もっと恥ずかしくなるぞ~恥ずかしくなるぞ~ケケケケ!」
涼香の物語は、屈辱と夢の狭間で新たな試練(恥)へと突き進む。
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