「いや!触らないで!変態!」

と叫び、咄嗟に身体が反応する。

得意の右フックを連発し、拳が医者の頭や顔にヒット。
「痛!」と医者が悲鳴を上げ、よろめきながら後退する。

涼香の怒りと恐怖が爆発し、叫びながら両腕を交差させ、新技「クロスパンチ」を繰り出した。
拳が医者の頭を捉え、彼は床に倒れ込んだ。

だが、その瞬間、部屋のドアが勢いよく開き、緊迫感が一気に高まった。
二人の警察官が銃を構えながら乱入してきた。
制服に身を包み、冷徹な目で涼香を睨む。両者とも手に持つ銃口が彼女を狙っていた。

「おい、そこの全裸!」
「上級国民暴行の現行犯で捕獲する!動くな!」
と警官が低い声で警告を発する。
涼香が殴り倒した医者(病院長)は上級国民だった。
涼香はパニックに陥り
「ちょっと待って!私、この人に酷いことされそうになって、それで、これは、正当防衛よ!」
と必死に訴えた。

声は震え、涙がこぼれそうになり、全裸の無防備さが彼女をさらに追い詰めた。
だが、警官が一歩踏み出し、
「上級国民に対する正当防衛など、無い!」
と冷たく言い放った。
その言葉が涼香の心に突き刺さり、動揺が全身を貫く。
「人間って…そんなに不公平なの?」と頭の中で反響し、膝から力が抜けそうになる。
社会の理不尽さが、彼女の心に重くのしかかった。

「だまされているぞ」というファンの以前のメッセージが脳裏をよぎり、世の中への疑念が膨らんだ。
米騒動での屈辱、彩乃に負けた無力感、そして今この瞬間、裸で銃口を向けられる絶望。
涼香の頭は混乱し、「なぜ…私がこんな目に…」と呟く。
警官が再び警告を発する。
「動けば発砲するぞ!手を上げろ!」
と銃を構え直す。
涼香は恐怖で身体が硬直し、
「やめて…お願い…」
と呟くが、声は届かない。
次の瞬間、銃声が響き、弾が彼女に命中。鋭い痛みが走り、視界がぼやける。
「なぜ…私が…」と最後の思いが浮かび、涼香は崩れ落ちた。

本部への報告が機械的に進む。
「全裸で病院内で発狂し、院長を暴行した女が発生。麻酔銃で捕獲しました。病院長の診断によると、女は精神障害。よって監禁病棟へ移送します。」
彼女の運命はさらに暗い闇へと引きずり込まれた。


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