【涼香】66.栃木編パート3:恥の文化

小説

シン・湯けむりの宿 楓月庵の温泉セットは、湯けむりとカメラの熱で煮えたぎっていた。

葉月は、莉緒と千尋にバスタオルを外され、裸体を衆人環視の配信に晒す。

彼女の華奢な身体は、派遣のストレスでややくたびれているが、温泉への情熱を映すように、しなやかな曲線が湯けむりに溶け込む。

控えめな胸と自然な陰毛が、スポットライトの下で光り、彼女の内面と人生を静かに物語る。

ナチュラルにふっくらしたウエストは、事務仕事による運動不足の生活感を漂わせる。

彼女はヨガ教室に申し込んだものの、忙しさと疲れで続かず、数回で行かなくなってしまった。

そんな日常の痕跡が、彼女の身体に柔らかな趣を添える。

自慢のスタイルではないだけに、隠したい思いもあったが、意を決して晒されることになった。

それでも、カメラのレンズが彼女を捉えるたび、恥ずかしさが胸を締め付ける。

次郎がハイテンションでマイクを握る。

「葉月ちゃん! 温泉の説明して! インバウンド客向けに、ガッツリ盛り上げろよ!」

スタッフが下品に笑い、カメラが彼女の全身を容赦なくアップで捉える。

葉月は深呼吸し話を始める。

「この温泉は…硫黄泉で…。」

だが、予想以上の羞恥が彼女を襲う。

カメラの冷たいレンズ、スタッフの視線、配信で世界中に晒される自分の裸体。

「みんな…私の裸を見てる…!」

心拍数が急上昇し、彼女の声が震える。

覚悟を決めていたはずなのに、想像を絶する恥ずかしさが喉を締め付ける。

「肌に…良い効果が…。」

声が途切れ、言葉が詰まる。

何度か声を絞り出そうとするが、震えが止まらず、かすれた声しか出ない。

「ダメ…話せない…。」

葉月の膝がガクガクと震え、ついに耐えきれずしゃがみ込む。

「もう…無理…!」

彼女は両手で顔を覆い、泣き崩れる。涙が湯の縁に落ち、波紋が広がる。

「ごめん…莉緒、千尋…私、頑張ったけど…!」

莉緒と千尋は即座に駆け寄り、葉月を抱擁する。

「もういいんだよ、葉月!」

「こんなの無理だよ! もうやめよう!」

莉緒の声は涙で震え、千尋が続ける。

「借金私たちも背負うから! 3人で一緒なら怖くない!」

3人は湯けむりの中で固く抱き合い、絆が涙と混ざり合う。

葉月のすすり泣きが、温泉の静寂に響く。

東京のモニター室では、田中が映像を眺め、汚らしい声色で笑う。

「ケケケ! 日本は恥の文化! この涙、この抱擁、めっちゃ美しいね~!」

彼の目はギラつき、搾取の喜びに満ちる。

「視聴者数、爆上がりだ! インバウンド客もこれで食いつくぜ!」

群馬の控室では、万由マユがスマホで栃木班の配信を食い入るように見つめる。

「こんな搾取、許せない!」

彼女は次郎のハイテンションと田中のモニター室の反応をメモし、内心で怒りを燃やす。

「涼香さんの失踪…この裏に絶対ある。真相を暴く!」

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